竹村彰夫准教授・堀成人助教

接着学の基礎と応用

我々は日頃接着の恩恵を蒙って生活しています。
例えば身の周りにある電話帳、書籍、衣類、履き物、建材、家具、包装材料、子供のオモチャ、楽器、スポーツ用品などをよく見ると接着剤が使われていることが分かるでしょう。
自動車、車輌、航空機、ロケットなどでは各種の材料が苛酷な条件の下で必要な性能を発揮していますが、その中で接着剤が縁の中の力持ちとしてそのキーポイントを支えています。
そのほか電気/電子関連材料、医療用材料等々にいたるまで接着が関与していないものはないと言って良いでしょう。

しかし、接着に関する技術的展開が華々しく行われているのに対して、接着現象そのものの科学的理解は十分に進んでいるのでしょうか?
たしかに接着に係わるいくつかの側面については科学的解明が進んでいて、理論化も行われています。しかし、接着現象の総合的理解にはまだ到達していないと考えるべきではないでしょうか。
これは、接着剤、被着材、接着加工、さらには接着系(複合材料)に関係する因子が多すぎることと、接着に深く関与すると思われる科学分野があまりにも多岐にわたっていることに原因があります。
さらに、それだけではなく、実用的な面からの要求性能が必ずしも科学的な形で明確化されない場合が多いことも重大な原因の一つである。

私たちは高分子化学、界面科学に基づいて接着機構に関する総合的な研究を行っている。

1.ナノ摩擦力による表面レオロジーの解析

接着・粘着剤は粘弾性体であるため、いわゆる時間・温度換算則が適応できる。しかし接着の界面、表面は接着剤全体の層とは物性的に異なることが分かっている。
本研究では原子間力顕微鏡により表面のナノ摩擦力を測定し,表面においても時間・温度換算則が適応できることを示した。この研究により接着の界面の状態がより重要であることが分かる。

2.一般化二次元分光分析(2D-COS)、
近赤外分光分析(NIR)による接着剤の化学構造の同定

接着剤は3次元的に架橋するものも多く、それらは溶媒に不溶なのでその化学構造を同定するのは困難である。また接着層で固化した接着剤の化学構造も同定できません。
本研究では2DCOSを用い接着剤の構造を同定することができる。また、NIRは薄い試料は透過できるので接着層の構造をin situで解析することが可能となり、今後の展開が期待されます。

3.ポリマーブレンドの相溶性と粘・接着性能について

一般に粘・接着剤は単一のポリマーではなくポリマーブレンドでできています。そのため各成分の相溶性が非常に重要となります。
これらの研究は2D-COS、動的粘弾性等の手法により解析します。これらの相溶性の判定により、以下の様に粘着剤の構造について推定できます。

4.木材へ浸透した接着剤の可視化と定量、アンカー効果の検証から応用へ

木材は多孔質体なので、その空げきへ接着剤が浸透・硬化して接着特性を強めているとする考えがあります。顕微鏡を用いて浸透した接着剤の観察は行われてきましたが、どの程度、どのように接着特性へ関与しているかは良く分かっていません(たとえば接着強さへ)。

私たちは鮮明な顕微像を共焦点型レーザー顕微鏡で取得し(下図の左)、画像解析を用いて浸透した接着剤の二次元定量を世界で初めて行いました(深さを関数とした存在量、中のグラフ)。 この定量値と接着特性の関連性について(たとえば右のグラフ)、現在流通している木材と接着剤との組み合わせで検討を進め、木材接着の高信頼・高性能化または新規設計へつなげていきたいと考えています。

5.GPGPU・並列ハイパワーコンピューティングによる接着理論の探索

「コンピュータ、この物質の強度を推定してくれ」、「23℃での引っ張り強さは5GPa と予想されます」。
これはSFで見聞きする会話ですが、近い将来に実現するでしょう。

私たちは接着、特に木材接着の特性を計算機(パソコン, PC)でシミュレーションしています。この研究手法の完成形は応用範囲が広く、また有意義だと考えています。 それはシミュレーションが進歩し続けている理由の1つですが、外的刺激や観測方法、経過時間などに制限がありません(地球温暖化の未来予想などに似ています)。木材接着体に限っても、微少な時間での微細な変形の連続(例えば床板振動)や、長期間でゆっくりとした変形(集成材のクリープ疲労)、観測自体が難しい事柄(梁の耐炎設計、100年後の合板)などと、列挙に暇がないほど多くの適用が考えられます。

6.その他、生物材料を用いた高分子複合体の開発

キトサンを用いた高吸水性材料の開発:自重の1000倍の吸水量
キチンを用いた光学異方性材料の開発等々、その他ご相談に応じます。

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岩田忠久教授


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